暗黒費用

2018-02-11   society  management 

主にブラック企業で散見される、日本特有の極めて非効率なマネージメントに関して。あらゆる非効率マネージメントには、あるひとつの共通点がある。

それは、「目に見えない費用を無視する、もしくはその存在自体にまったく気が付いていない」ことである。

劣悪なマネージメント自体は、ブラック企業問題等で広く認識されているが、この「目に見えない費用」に関しては、あまり論じられていないような気がしたので、記事にまとめてみることにした。

その「目に見えない費用」にすでに名前があるかどうかわからなかったので、「暗黒物質(ダークマター)」に倣って、「暗黒費用(ダークコスト)」と命名することにした。

  • 暗黒物質」は、
    • 「観測しがたいが確実にそこに存在する物質」という意味だ(と思う・・・)が、
  • 暗黒費用」はこれと似たような意味で、
    • 「観測しがたいが確実にそこに存在する費用」という意味である

要するに、簡単には数字に出てこない費用だと考えてもらえばいい。

某有名企業の営業の話だが、その企業は新卒で結構な人数が入社するが、3年で半分も残らないそうだ。話を聞く限りでは、予想通りだがマネージャーに体育会系の無能が多いようだ。実際のところ、彼らマネージャー陣は、売り上げの数字的な意味で有能とされているのだろうが、それは暗黒費用を一切勘定に入れない限りで有能ということでしかない。

ここでの暗黒費用は、

  • 採用に関連する費用
  • 社員教育に関連する費用
  • 大量離職によるノウハウの流出・喪失
  • 大量離職者による評判の低下
  • 大量離職者分の補充に関わる費用

などが考えられる。

これらをすべて考慮に入れてもなお、そのマネージャー陣は優秀だと言えるだろうか。これらは彼らがまともであれば、無駄にならなかった費用である。そしてこれら無駄になった費用こそが、暗黒費用を無視することの弊害そのものである

ブラック企業は、この暗黒費用をとにかく徹底的に無視する。

  • 効率を無視して低スペック型落ち PC を使い続ける
  • 翌日以降への体力面での影響を無視してとにかく残業
  • 劣悪なマネージメントによるヘイト値増加を無視
  • 費用対効果の低い作業を当たり前のように続ける

こういったマネージメントを行う人を何人か知ってるけど、「もともと知力・想像力等を含めた基礎的能力が低いのに、たまたま成功してエラくなってしまった」という共通点が見受けられる。彼らは元の能力が低いので、そもそも暗黒費用という概念は理解できないし、一時的に理解したとしても、それを考慮した行動を取ることはできない。

どうもこの日本という国には、そういった能力の低い人たちが率先してマネージメントを行う土壌がある気がする。おそろしく無能な経営者とか、労働者を使い潰すマネージャーとか、彼らがいなくなる気配はまったくないどころか、どんどん増えているような感じすらある。

そういったマネージメントへの対抗策は、ボイコットが一番だ。暗黒費用が無視されている気配を感じたら近づかない、これに尽きる。なぜなら、そういったマネージメントが根本解決されたケースを見たことがないからだ。その元凶である本人が飛ばされる、もしくはそういった元凶のないところに移動する、このパターンでしか解決されたためしがない。つまりボイコット以外に方法はないのだ。

逆に優れたマネージメントを行いたければ、この暗黒費用に目を向けるとよい。個人的には人間の感情や精神面に目を向けたい。ここから発生する暗黒費用をいかに減らすかが、これからの時代は重要になっていくような気がしている。