訳あって比較的 IT リテラシーの低いメンバーと働くことになったのだが、一緒に働いているうちに、だんだんと彼らの根本的な問題点が見えてきた。その問題点からの考察を、ここで一度まとめておきたい。
結論から言うと、ITリテラシーの低い人たちの問題点は「ペーパー脳」にある。ペーパー脳とは言っても、「考えていることが薄っぺらい人」という意味ではない (まあ、結果的に薄っぺらいかもしれないが・・・失礼)。
ペーパー脳とは?
「ペーパー脳」とは、最終成果物に紙媒体を想定する思考形態のことだ。
ペーパーレス化が叫ばれて久しいが、「紙にプリントアウトしなければペーパーレスである」と勘違いしている人があまりにも多い。多すぎる。「紙にプリントアウトしなければペーパーレスである」というのは一見正しいが、それは最終成果物である紙の直前で仕事を止めたにすぎない。プリントアウトという最終工程を省いただけで、ペーパーを目指して仕事をしていることには変わりない。ペーパー脳の人たちは、このことが理解できていない。
ペーパーレスペーパーワーク
日本企業で働いている人なら、Excel で作成された、おれが「真っ黒罫線びっちびちドキュメント」と名付けた、真っ黒のぶっとい罫線だらけの履歴書みたいなフォーマットの Excel ドキュメントを目にしたことがあるだろう。あれこそがまさにペーパー脳の産物である。あんなペーパーワークを引きずり回したドキュメントを作っておいて、「紙にプリントアウトしないからペーパーレスだ」と言っているのだ。正気の沙汰ではない。
余談だが、おれは罫線が嫌いだ。こと日本人が作るドキュメントは、異常なほど罫線だらけのものが多い。あれはおそらく、日本は長い間「手書きの文化」だったことに由来する。アルファベットを使用するシングルバイト文化圏では、タイプライターが使えたため、この問題は発生していない。PC によって手書きが駆逐された現在では、罫線は完全に無用の長物なのだ。
真のペーパーレスへ
真のペーパーレス化には、「最終成果物に紙媒体を想定しない」ことから始めなければならない。それにはまず、いわゆるオフィスソフトをやめることだ。あれはペーパーワーク時代の思想を引きずった設計であるためか、ペーパー脳を促進するという壊滅的な副作用がある。実際のところ、ITリテラシーの低いペーパー脳の人たちは、オフィスソフトが大好きだ。
だからこそおれは「オフィスソフトを捨てない限り、真のペーパーレス化は実現できない」と考えている。
加えて真のペーパーレス化を実現するには、従来のペーパーワークからプロセスそのものを変える必要がる。前述のとおり、プリントアウトしないだけでは、ペーパーワークと大差ないのだ。
「ITリテラシーの低いおじさんが、画像を送るために、シートに画像を貼り付けただけの Excel ファイルを添付してメールしてきた」という笑い話があった。たしかに滑稽ではあるが、ペーパーワークを引きずり回す彼らの頭の中には、オフィスソフトしか存在していないのだ。
では一体どうするのが正解なのか? JPEG ファイルをそのまま添付してメールする?残念ながら、いまの時代はそれも不正解である。不正解であるどころか、画像を Excel ファイルに貼り付けて送ってきたおじさんと大差ない。
Web脳を目指せ
現状の正解は、
- Scrapbox や Dropbox Paper に貼り付けて、URL のみをメールやチャットで共有する
- 指摘内容や共有事項は該当 URL のページ上に直接記載する
である。これがペーパー脳と対極の Web脳であり、目指すべき思考形態だ。
Web脳を目指す上で重要なのは、まずファイルという概念への依存を捨てることだ。具体的には上記 1 のように、「Scrapbox 等に画像ファイルを貼り付けて URL 化する」ことで実現可能だ。個人的には「ファイルをクラウドで隠蔽する」と表現したい。
ファイルという概念もまた、ペーパー脳を促進する。実際のところ、ファイルはペーパー、つまりプリントアウトの直前で止めただけのものにすぎない。ファイルはペーパーワークのプロセスの一部であり、その証拠に「ファイル」はもともと紙を綴じた物を意味する言葉だ。だからこそ Scrapbox などに貼り付けることで、ファイルの存在を隠蔽してやる必要があるのだ。
コミュニケーションするな、コラボレーションしろ
加えて、ファイルのやり取りという行為は、必ずコミュニケーションを必要とする。仕事において多くの場合、必要なのはコミュニケーション(伝達) ではなく、コラボレーション(協同作業) である。非効率な現場では、コラボレーションすべきときに、延々とコミュニケーション (メールやチャット、またはミーティング) をしている場面が散見される。
Scrapbox や Dropbox Paper は、同一ドキュメントを複数人が同時に編集することが可能だ。これはメールやチャットをスキップして協同作業が可能なことを意味する。
まとめ
まとめると次のとおり。
- ペーパー脳
- ファイルベースの思考
- オフィスソフト
- コミュニケーション
- Web脳
- URL ベースの思考
- Scrapbox、Dropbox Paper、等
- コラボレーション
このブログでも何度も紹介しているけど、Scrapbox を使いましょうということに尽きる。あれは Web脳を加速してくれるツールでもあるからだ。
Web脳を目指していくと、ファイル管理から開放されるというプラスの副作用もある。Google Play Music で MP3 ファイルから開放されたり、Gyazo で JPEG ファイルから開放されたり、といった具合だ。
ファイルを捨てて、インターネット時代に最適化された Web脳を目指していこう。